研究室配属前の学生さんへ

研究室配属希望を決める際に助けとなることを目指したページです。 大学院進学先の検討にも一部は役立つと思います。

私の研究室に限らない一般論ですが、 いざ入ってから「なんだか思っていたのと違う」「こんなはずじゃなかった」となるのは不幸なことです。 研究室配属の希望調査は、研究分野のことをまだまだ知らない段階で巡ってくるので、 誰もが判断に迷うことと思います。 理学部にはオープンラボやラボ探検など、様々な機会がありますので、 ぜひいろいろな研究室を回ってみましょう。 そして先輩や教員に質問してみると、 それぞれ違う視点からの話が聞けることでしょう。

余談ですが、学部の研究室配属には定員上限が設けられるため、 希望と違う研究室に配属されることもあります。 そのような場合、 大学院進学時に研究室を変えることができることも気に留めて置くと良いでしょう。 希望通り行かなくても、単に知らなかっただけでそっちの研究をやってみると実は面白かった、なんてこともあったりします。 あまり深刻に考えすぎないことをお勧めします。

入ったら何をやるの?何が身につくの?

具体的に取り組むことは、個々のプロジェクト全体の進展状況によって変わります。 あるいはタイミングによっては、新しいテーマが突発的に立ち上がることもあります。 以下に挙げたキーワードのいくつかに携わることになるでしょう。 実験系のテーマだと、ものを設計して作り、動かして評価するサイクルになります。 計算機に向かいっぱなしになるテーマだとコンピュータとその周辺スキルが伸びやすいでしょう。

  • 研究・開発の進め方
  • プレゼンテーション技術
  • レポートや論文の書き方
  • 放射線・素粒子・宇宙線物理と検出器技術
  • 天体・宇宙物理学と観測技術
  • 電子回路の設計・開発・評価
  • Mac/Linux系CUIとプログラミング技術(python, C++)
  • コンピュータシミュレーション(C++)
  • 多変数データの解析と分析、統計学
  • CAD等専用アプリケーションと簡単な器械設計
  • FPGAのコーディング開発(Verilog, VHDL)

特別に必要な前知識はありません。 強いて言うなら、コンピュータの操作やキーボード入力に慣れていることでしょうか。 スマホで私達の研究はできません(できるようにスマホアプリを開発する!という提案は大歓迎) 宇宙物理学は学部で学習する物理学が総出演するオールスターのような応用分野なので、 研究しながら勉強を常時並行することになります。 学習効果を上げるためには、講義や演習・実験を通じで土台を固めておくことが重要です。

指導方針は?

何よりも研究を楽しめることを願っていて、個性に合わせた指導ができるよう試行錯誤を続けています。 右も左もわからない最初は身につけることが多く大変ですが、 ある程度わかってきて自分なりの面白いポイントが見つかると、自然と研究を前に進めたくなって欲しいと願っています。そんな研究との出会いの場を提供できるよう努めます。

卒業後の人生の基盤となるものを身に付けて欲しいとか、 他の大学・研究機関の研究者や学生さんと交流して欲しいとか、 打ち合わせやセミナーで質問できるようになって欲しいとか、 語りだすと長くなるあれこれを抱えて指導に望んでいます。 大半のみなさんは研究者にはならないし、目指していないと思います。 なのになぜ「研究」をしないといけないのか?という問いに対して、 自分なりの答えを見つけられるようになってもらいたいです。 漠然としててうまく伝わない気がしますね。この段落は要推敲。

うまくいきそうだと思う道筋を示して、目標到達点を定めることを理想としています。 しかしながら研究というものの性質上、思うように行かなかったり状況が変わって方針転換することがあります。 卒業研究は「うまく行かなかった」ことを理由に評価は下がりませんので、その点だけは安心して下さい。

あなたの卒業研究は教員や先輩の研究の「お手伝い」ではありません。教員や先輩に助けてもらうことはあっても、みなさん一人一人に任されたテーマです。プロジェクトの大きな枠組み中で自分の研究はどういう位置づけなのか、どういう意義があるのかを意識して下さい。ほとんどの研究は一人ではできませんので、研究室という集団をうまく利用して下さい。一人一人のテーマは異なっても、共通するノウハウや技術を持っていたり、外から目線で役に立つヒントが転がり出てくることもありえます。いろいろな人と研究の話を日常的にしてほしいです。

卒業研究はサークルや部活とは違い正規のカリキュラムですので、気が向いたときだけふらっと研究室に来るようなサイクルは問題があります。平日昼間からアルバイト三昧も困ります(もちろん経済的な問題など、事情がある場合はその限りではありません。キャンパス内の生協でアルバイトして終わったら研究室に戻る、という先輩もいました。)個人に合わせて進め方を相談します。

週に1回のミーティングで進捗報告をしてもらいますが、プレゼン(というと大げさですが)の練習という面にも重心を置いています。 現実問題として週に1回では状況の共有頻度が低すぎるため、もっと頻繁に進捗や詰まっていることは相談して下さい。 学生部屋にもしょっちゅう顔を出してダベりに行っています。

 

就職先は?大学院行ったほうが良い?

学部新卒の場合は就職活動時にほとんど研究が始まっていないこともあり、 卒研の分野や内容は採用にあまり影響しないと予想されます。 一方で大学院卒になると、専門性を生かした就職になりやすくなります。 これまでの進路実績を列挙すると以下になります。

  • 学部卒:進学(理工学研究科・教職大学院)、教諭、公務員、営利企業(営業・開発)
  • 修士卒:学芸員、公務員、営利企業(開発)

いずれも学生さん一人一人が努力した成果であり私が直接影響したわけではありませんが、 大学院生は研究活動を説明したりアピールする機会があるでしょうから、 研究を通じて間接的に影響がある、ぐらいは言っても怒られないですかね。

大学院生は学部生よりもさらに精力的に研究に注力することが求められます。成績的な評価がどうこうという話ではなく、そうでないと自身の研究が進まないからです。就職した同級生が定時勤務しているのと同程度の時間は研究や学習に費やしていないと、思うような成果は得られないでしょう。

ガンマ線天文学をテーマに希望する学生さんには、原則として大学院に進学することを強く勧めています。学部生のうちは国際チームの正規メンバーとして認められないため、アクセスできる情報が限られるなどの不自由が多いからです。別のテーマで卒業研究をやって、院生になってから切り替えるという道も実績があります。

発表論文や研究資金の実績は?

研究業績はresearch mapというサイトに集約されています。教員を厳しくチェックしたい人は見に行って下さい。研究資金が確保されているかは、大学院を検討する上では重要な判断要素の1つとなりえます。

社会貢献?

社会貢献というとなんだか偉そうですが、研究等を通じて身につけた科学的な知識や技術を多くの人に知ってもらいたい、我々と同じように楽しんでもらいたい、そして一緒に楽しみたいというモチベーションがあります。相補的な2種類の活動に現在携わっています。

  • 宇宙・天文を題材とした科学普及活動をミッションとするNPO法人小さな天文学者の会(通称:小天)で、科学の裾野を広げる活動を市民とともに楽しみながら続けています。星空案内人(星のソムリエ®)の資格を持っていて、小天が理学部と共同運営しているやまがた天文台ニクニドームの星空案内ガイドツアーも年に何度か担当しています。
  • 簡易な宇宙線ミューオン検出器などを使って中高生の探求活動を支援する活動を、他機関の研究者と連携して勧めています。加速キッチンでは検出器開発やデータ解析など、大学生顔負けの研究を高校生が実施していて、ときどきサポートをお手伝いしています。

このような活動を一緒にやってみたい学生さんは、配属とは無関係に歓迎です。 また、例えばサイエンスコミュニケータプログラムの学生さんが、 教材開発やワークショップなどの実践を通じた卒業研究ができないだろうかとも考えています。

(星のソムリエ®は星空案内人資格認定制度運営機構が管理運営する登録商標です。)